遠距離、恋愛。-二人の距離-
「ただいま」

「あら、コウタ。おかえりなさい」

声をかけてやっと俺の存在に気が付いた二人は、手を止めることなく俺を見てにっこり笑って。

「久しぶりだな」

父さんに至っては、片手が母さんの腰にまわていて。

家の中で何をしているんだか。

我が父親ながら、呆れてしまう。

「二人とも元気そうで」

「またバイトか?そんなに稼いでどうする?」

母さんの作ったものを味見しながら、俺に話しかけてくる父さん。

「まあ、特に欲しいものがあるわけじゃないけど。でも、いい経験ができていると思います」

実際、この夏休みのバイトも、旅館という仕事を体験することができたし、通訳としても経験を積むことができた。

観光へ来たお客さんが、何を求めていて何を感じているのか。

それを肌で感じることができたような気がする。

「そうか。でもこれ以上の留年は許さないから覚えておきなさい」

「それは大丈夫です」

俺だって、これ以上学生をやるつもりはない。

毎年同級生が年下になっている現実。

不便はないけど、気を使うことがあったりするのも事実で。

俺自身は気にしていなくても、周りの人は気にしたりするようで・・・。
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