遠距離、恋愛。-二人の距離-
「え?先輩が?」

「そうそう、俺の兄貴の友達がこのサークル出身でさ。数年前に独立して今人を探しているらしいんだ」

個人で立ち上げた小さな会社。

友人同士でやっていたけど、順調なので従業員を増やしたいらしい。

仕事内容などを聞いても、楽しそうな感じだったので興味が湧いてきて。

「一度会ってみないか?前に会った時、お前の話したら興味持ってさ」

海外生活の経験があり、なおかつ通訳までやっている俺に興味を持ってくれたのだという。

俺でもできることなんだろうか。

というか、今まで小さな企業を見てこなかったので、とても興味がある。

「紹介、してくれる?」

「おお、今から電話してみるよ」

話しは順調に進んで、次の週末に面接をすることになった。

自宅マンションをオフィスとして使っているらしいお宅へお邪魔しての面接。

「じゃあ、ビジネス英語は大丈夫だね」

「はい」

社長といっても、俺とそんなに年齢の変わらないはずなのに、やはり会社を興す人ってどこか違うのだろうか。

話を聞きながらも、仕事そのものよりも社長に人間としてかなり興味が湧いてきて。

「春からちゃんとした事務所を構えることにしたんです。社員も増やして活動範囲を広げるので」

カリスマ性のある人って、こういう人のことを言うんだと思う。

すっかりその気になってしまった俺は、面接だというのに思い浮かんだ計画をあれこれ説明してしまった。
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