泣き虫の恋
呼ばれたほうへと行く、おばさんの姿を優衣は何の気無しに眺めていた。
おばさんは、おばさんと同い年くらいの人たちのとこに行き、少し話し、泣き崩れていた。
優衣は無表情のまま部屋を見渡す。
この畳みの部屋には、見知った顔もあるが、誰も優衣に近づいてこない。
「はあー」
堅苦しい雰囲気に気疲れしたのか、ふとため息をついた。
(そういえば最近寝てなかったな)
優衣は、中堅企業で社長秘書をしている。仕事は、想像以上にハードで、特に忙しいいまの時期は、数日徹夜もある。
優衣はもう一度ため息がでそうになった、と、急に、誰かに後ろから引っ張られ、抱きしめられた。
力強い腕に引っ張られた先には、細身なのに鍛えられた厚い胸板で。
それが誰かなんて、顔を見なくとも分かる優衣は、小さく口を開いた。
「しゅん兄?」