泣き虫の恋
優衣は顔を上げ、一度後ろを振りかえり人混みの先にある、ある姿を見た。そして、"泣け"、そう言った兄の顔を見る。

「優衣、泣け。」

兄はもう一度、優しく優しく、言った。

途端、優衣は兄の腕の中で、泣き崩れた。

昔と変わらない優しい腕の中で。
優衣は、小さい頃からいつも兄に守られていた。頑固なのに泣き虫な優衣が泣きそうになっていると、兄はいつも「泣け」と言い胸を貸してくれていた。

あの頃と変わりない兄が、いま優衣の前にいる。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop