危険な彼女
「そして、目を閉じて。

ゆっくり息を吸うの。」




奈津は目を閉じ、ゆっくり息を吸った。



真っ暗な空間で、彩芽の言葉だけが頭に響いてきた。




「そしたら、亜紀ちゃんのことを思い浮かべてみなさい、できるだけ強く」




そう言われ、奈津は亜紀のことを思い浮かべた。



笑っている顔。


泣いている顔。


照れている顔。


怒っている顔。




幼いときから見てきた亜紀の姿を、顔を、たくさん思い浮かべた。





「奈津、今…心臓はどんな感じ?」





諭すような口調で、彩芽が問いかける。



奈津は胸に当てた手を確かめた。
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