危険な彼女
「あんの馬鹿姉め………」




ぐつぐつと怒りを煮えたぎらせる奈津。



拳を握りしめ、怒り目は本気であることを物語っていた。




しかし、それは仕方ない。



姉の彩芽が帰ってきて以来、彼にはろくなことがないのだ。




例えば、奈津だけ夕飯のおかずがおちょこサイズになったり、姉の分まで弁当を作らさせられたり、奈津の部屋が殺風景になる、など様々である。




――いつかぎゃふんと言わせてやる………




奈津は顔を上げ、固く心に誓った。




『奈津〜、よけいなこと考えてない〜?』




ビクッ!!




聞こえるはずがない、見えるはずがない、そもそも分かるはずがない。



しかし、絶妙のタイミングで彩芽は言葉を返してきた。







………奈津が姉をぎゃふんと言わせることは永遠になさそうだ。
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