危険な彼女
長い沈黙が続いた。




こんな空気を亜紀が耐えられるはずがない。



ただでさえ告白したあとなのだ。



自分が何かを言ってやらなければならない。




そう思うのに………





「………今はね、いいんだ」




奈津はバッと顔を上げた。



亜紀がうるうるした目で、ニッコリと笑っていた。




鈍い奈津でも分かる。



これは作り笑顔だ。



奈津に心配させまいと、亜紀が必死につくった笑顔だ。





「返事は………聞かなくていいの………

でも………」




そこで亜紀は口ごもる。




奈津は思わず亜紀に手をのばしそうになり、無理矢理拳をつくってひっこめた。




「覚えていてほしいな………

私が…なっちゃんのこと…好きだってこと………」




そう言って、亜紀は立ち上がった。



勉強道具が入っているであろう鞄を持ち、部屋のドアへ向かって歩き出す。




「………いつか、答えを聞かせてね………」



「あっ………!」




亜紀、と呼びかけた。



しかし、次の瞬間、亜紀は逃げ出すように部屋を出ていってしまった。
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