お菓子のこころ《詩集》
春の果実
今思えば
あの小春日和
君の冷たい掌を暖めることの幸福に気付いたとき
僕は既に
恋に落ちていたのだと思う
通学時間
いつも通り来るバス
一番奥の窓際の席
遠くを見つめる君の横顔
何気なく見ていたつもりだったのに
気付かれてしまった 一瞬
目が合えば頬を赤らめて
俯く君
出遭った日のことを思い出しながら
一歩一歩足を踏み出すごとに
とくんと跳ねる心臓
鼓動の向こう
知らない痛みを覚えた 春