Thank you for...
…ワケアリって何?

すごく聞きたかったけどグッと言葉を飲み込んだ。

その代わり「ふ~ん」とだけ、興味なさそうに返す。

翔はそんな私をチラッと見て、再び美里たちとバカ笑いを始めた。




変な人。

5コも上なのか。

大人だなー。

そんな事を考えながら、ピッチを上げてビールを喉に流し込んだ。






―――飲みすぎた。


騒がしい店から抜け出し、私は一人店の前の道端にしゃがみ込む。

冬の名残を残した風が火照った体に気持ちいい。

キャンパス地のトートバックからタバコと携帯を取り出すと、座り込んだまま唇に挟んだタバコに火を付ける。

ため息混じりに煙を吐き出すと、手元の携帯がブブ…と震えた。

誰ー?

あ、昌斗だ。

「殺させて」の事件後、その日のうちに別れた私達は、卒業後不思議な事に仲の良い友達に戻ったのだ。

時折、こうやって電話やメールをしてきて世話を焼いてくれる。


「もしもーし」

「何やってるー?」

「新歓の飲み会」

「もう日付回るぞ?まだ飲んでんの?」

「そう。あー、飲みすぎたぁ」


タバコのせいもあって一気に酔いが回る。

そんな私に向かって昌斗は「迎えにいこうか?」と言う。

まるで彼氏のよう。

でも…彼氏じゃない。

心配そうな声に神経を逆撫でされた気分になる。
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