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「口当たりいいからね、気を付けなさいよ」

親のような口ぶりで眉をしかめて、でも嬉しそうな顔で言ったのは由美ネェ。

「でしょー!!オネーサンに気に入ってもらって超うれしい!!」

子供のようにはしゃいで喜んだのはヒカル。

「だーかーら、鹿児島だっちゅーの!!」

未だ生産地にこだわる美里は、もう酔っ払いにしか見えなかった。

その酔っ払いは、由美ネェの椅子に自分の椅子を寄せると「今日はとことん飲みましょう!!」とくだを巻いている。

由美ネェも呆れながら「分かった、今日の出会いにーっ!」とグラスを高く掲げた。

大好きなイトコの由美ネェと、同じくらい大好きな親友が意気投合してるのを見るのって、悪い気はしないもんだなって思っていた。

私は、そんな二人の笑いあう姿を見ながらグラスの中身を胃の中に全て落とし込む。


「もう一杯作ろうか?ロック?水割り?」


目の前の子犬が、純粋な目で私を覗き込む。


「次はロックで飲んでみたい」


初めて口にした芋の香りと、この場の雰囲気を体に刻み付けたい、そう願った。

私はまだ楽しいって思えるし、

こんなにステキな友人がいるって事を忘れない為に。

大学に戻って、

どんなに辛い現実があったって耐えられるように。

この旅の間だけは、普段のしがらみから抜け出そう――

私は笑顔を作り、ヒカルに言う。

「今日はとことん飲もうねっ!!」

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