Thank you for...
「俺ね、今日、大好きな人に振られちゃいました~」
体を左右に大きく揺らしながらヒカルが笑う。
「だから、今日は失恋パーティーなの」
「あ・・・そう・・・なんだ」
心臓が痛かった。
忘れて楽しんでいたはずなのに、一気に現実に引き戻される。
そして私はまた、想像して一人不安に押しつぶされそうになるのだ。
失恋したと笑うヒカルに掛けてあげる言葉も探さないまま、すっかり冷えてしまったチキン南蛮に視線を合せると、私は手元の煙草に火を付けた。
「オネーサン、俺も1本貰っていい?」
私の煙草の箱を細い指先でトントンと叩きながらヒカルが唇を尖らせて言う。
「どうぞ」
私の言葉がなくても貰ってました、という素早い動作でメンソールの煙草を口に咥える。
そんなヒカルの姿を横目で見ながら、私は再びグラスを空にしていった。
「オネーサン、お酒強いんだ?」
誰とも喋らず、黙々と失恋の差し入れを胃に流し込んでいる姿が浮いていたのだろうか?
いつの間にかアキラさんも合流して盛り上がってる美里たちとは距離を置いて、ヒカルが私に語りかける。
年下に気を使われてる――
そう感じる。
年下に・・・って、年なんか知らないけど、オネーサンって呼ぶんだから年下なのだろう。
強いなんて思ったことない。
人並みには楽しいお酒が飲めるとは思うけど。
いつもは翔が「やめとけー」って私を止めるから、こんなに飲んだのは久々かも知れない。
でも――
「うん、強いよ。美味しいね」
口から出るのは、やっぱり強がりだった。
場所を変えても、私は上辺でしか物が言えない。
臆病者――
今の私にはピッタリの愛称だ。
体を左右に大きく揺らしながらヒカルが笑う。
「だから、今日は失恋パーティーなの」
「あ・・・そう・・・なんだ」
心臓が痛かった。
忘れて楽しんでいたはずなのに、一気に現実に引き戻される。
そして私はまた、想像して一人不安に押しつぶされそうになるのだ。
失恋したと笑うヒカルに掛けてあげる言葉も探さないまま、すっかり冷えてしまったチキン南蛮に視線を合せると、私は手元の煙草に火を付けた。
「オネーサン、俺も1本貰っていい?」
私の煙草の箱を細い指先でトントンと叩きながらヒカルが唇を尖らせて言う。
「どうぞ」
私の言葉がなくても貰ってました、という素早い動作でメンソールの煙草を口に咥える。
そんなヒカルの姿を横目で見ながら、私は再びグラスを空にしていった。
「オネーサン、お酒強いんだ?」
誰とも喋らず、黙々と失恋の差し入れを胃に流し込んでいる姿が浮いていたのだろうか?
いつの間にかアキラさんも合流して盛り上がってる美里たちとは距離を置いて、ヒカルが私に語りかける。
年下に気を使われてる――
そう感じる。
年下に・・・って、年なんか知らないけど、オネーサンって呼ぶんだから年下なのだろう。
強いなんて思ったことない。
人並みには楽しいお酒が飲めるとは思うけど。
いつもは翔が「やめとけー」って私を止めるから、こんなに飲んだのは久々かも知れない。
でも――
「うん、強いよ。美味しいね」
口から出るのは、やっぱり強がりだった。
場所を変えても、私は上辺でしか物が言えない。
臆病者――
今の私にはピッタリの愛称だ。