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耳元の音がなくなっても、

私はしばらく動けずにいた。

たぶん、頭が動く事を拒否していたんだと思う。

今、耳に届いた言葉を理解しないように電源を切ったんだと思う。

でも――

私は理解してしまった。

翔が両親が来ると私に嘘をついてまで

アノ人に会ってるという事。

その人が、翔の胸で泣いてるという事。

その涙の原因が私であるという事。

赤ちゃんの再会を誓ったのに――

大切な命と自分の体を犠牲にしてまで翔の進学を応援してたのに

その人を、

私が悲しみの淵に追いやってしまったのだ。

翔は優しいから、泣いてる彼女をほっておけない。

きっと、彼女が宿泊するホテルに送って行ったか

翔のアパートに連れて行ったのだと思った。

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