Thank you for...
「付き合ってるって…え、俺?」

しゃがみ込んだ私を覗き込むようにして翔が言う。

「だって…日曜日、で、電話で付き合っててって言ったでしょ?」

「え?・・・買い物付き合ってとかじゃなく?いや、そもそも俺電話とかしてねーし」


―――うそ。


顔からサーっと血の気が引いていく。

何?

私は、じゃあ一体誰と…?

…待って。

思い返してみると、電話の相手は一度も名乗ったりしなかった。

声のトーンで私が勝手に決め付けたに過ぎない。

アルコールが入った状態で聞いた声を、次の日に正確に覚えてる方がおかしいのに。

一人で舞い上がってたみたいで…なんかカッコ悪っ…。

今度はみるみる顔が熱くなる。

たぶん耳まで真っ赤になってたと思う。

翔に申し訳なくて、情けなくて…。

ホント、この場から消えてなくなりたいくらい苦しかった。



【イタズラ電話】


バカだよね。

そんな事も気が付かないなんて。

最悪だ。

最低。

俯いた私は、涙がこぼれない様きつく目を閉じる。

「ごめん、勘違い」

泣かない様、動揺がばれないよう、私は笑い顔で。

それがその時できる精一杯の謝罪だった。
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