Thank you for...
翔の目は真剣だった。

私の事を見透かしたような目。

私が泣きそうな顔をしてるって?

笑ってたよ?

こんなに、笑えるよ。

大丈夫、踏ん張れ私。

一生懸命笑顔を作ろうとするのだけど、翔のまっすぐな視線の前で、体どころか顔の筋肉までもが動く事を拒んでいた。


誤魔化せない


脳がそう理解したのかは分らない。

それまでマネキンのように固まっていた私の体から自然を力が抜けていった。

ベンチの背に体重を預け、顔を上げることもできない。



何でバレた?

5歳の年の差のせい?

そうか。

5年も長く生きてりゃ、拗ねた私の心なんて、子供のウソを見破る位簡単に分かるよね。

でも、毎日ここに来てるのを気付いてたって事は――。

私の心の奥の方でトクンと小さく胸が鳴った。

でもそれは、この前の事があったから。

他に特別な感情なんてあるわけないし。

だから今ここで本音を吐き出すなんて出来ないと思った。

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