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通された翔の部屋は、8畳ほどのロフト付きワンルームだった。

玄関には靴が散乱し、右手にあるキッチンには汚れた食器が無造作に積まれている。

そして部屋全体が、洋服と教科書、雑誌類で埋もれていた。



「…汚い」

思わず声に出してしまう。

何がいるもので、何がゴミなのか。

異臭がしないのが不思議な位。

「今、汚いって言ったろ」

「あ、ごめん」

「コーヒーやるから、適当に座ってろ」

この汚い空間で、どうやってコーヒーを入れるのかと不安がよぎる。

でも、私は借りてきた猫のように大人しく開いたスペースに座るしかなかった。

キッチンに立つ翔を眺めながら、ゆっくり部屋を見回す。

彼女…いないのかな。

いないよね、汚いし。

いたら掃除位するだろうし。

部屋の棚に置かれた写真立てに気付いて、ばれない様にそっと覗き込んだ。

大勢の男の人とバイクに囲まれた翔。

みんなお揃いの黒の服を着て、楽しそうに笑っている。


…暴走族?

いまどき珍しいヘアスタイルで。

バイクと言っても改造バイクで。

見てはいけないものを見てしまったかも知れない…。
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