Thank you for...
「見たな」

声に驚いて慌てて振り返ると、マグカップを持つ翔と目が合った。

意外にも怒った表情ではなくて、少し極まりの悪そうな笑い方をしていた。

「ヤンキーでしたか…」

上目遣いで恐る恐る口にする。

すると「ヤンキーじゃねぇよ」とすかさず制された。

「いや、この写真を見る限り…」

「軟派なヤンキーと一緒にすんな。俺は走り専門です」

暴走はしても喧嘩はしねーの、そう付け加えて足元の服を蹴飛ばして出来た空間に座った。

コンパの時に言ってた訳ありってこれのこと―?

一瞬頭を過るが、今はどうでもよかった。

さっき言われた「子供だな」って言葉が胸に刺さったまんまだったから。

何か余計な事を言わないよう、口に神経を集中させていた。





「ところで――」

白く湯気の立ったカップを口から離し、翔が私を見つめる。

ふぅと短く息をつき「いくつだたっけ?」と尋ねた。

「先月、じゅう…きゅうになりました」

「19…ね」

私は教師に呼び出された時よりも体が緊張して硬くなっていた。

「リョウさ、惚れた経験ないだろ」

「…え?」

意外な質問だった。

「惚れた奴に、必死になって好かれようと思った事ないだろ?」

…そう、かも知れない。

いや、実際その通りだった。

告白されて、いつかスキになるかもと付き合ってみる。

それの繰り返し。


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