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当たり前なのかも知れないけど、

いや、考えすぎなのかも知れないけど、私が部屋に一人残る事を翔は嫌う。

タバコを買いに行くにしても、私も一緒に外へ連れ出した。

まぁね、彼女でもないし。

信用されてないんだと思うけど、別に家捜ししようとはこれっぽっちも思ってないんだけどね。








アパートから10分ほど歩いた場所のドラックストア。

新発売や特売のシャンプーの陳列棚を、私たちは並んで見つめていた。


「どれがいいと思う?」

「…さぁ」

「俺たち的に、成分表示って大事じゃね?」

「何で?」

「化学に携わるものだから」

「…成分見て何か画期的な違いが分るの?」

得意気な顔で商品を見つめる翔を横目に、私は冷たく言った。

まだ大学の講義だって一般教養の範囲内だし、専門的な事を何も知らないのは同じ学部に通う者なら当然分りきったことだしね。

案の定「わかんねーな」と諦めたように私に助けを求めてきた。

一般の人にも分るように、宣伝文句や効能が載ってるんだから…。

私は呆れ顔で棚に並べられた一つを手に取り「これにしなよ」と手渡した。
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