Thank you for...
「はい、これで少し時間おいて流せばオッケー」

温めたタオルで丁寧に頭を包むという、美容室さながらのサービスで髪をいたわる。

「どれ位?」

「15分位でいいんじゃない?」

「ふーん、じゃ、一緒に温もろうぜー」

狭いバスタブに、無理矢理体をねじ込んでくる。

「いや、絶対無理だって!」

一人入ればギュウギュウの狭さなのに、二人は無謀すぎるよ、と慌てて押し戻した。

「何とかなるって」

と、相変わらず能天気な笑い方で私の手を振り解く。

夏でも風呂はいいなーなんて呟きながら、お湯に体を沈めた。

狭いバスタブの中で、私と翔は向かい合い、互いに折り曲げた足先で相手の腰を挟むという滑稽な格好をしていた。

さすがに私もこの格好はどうかと躊躇したけど、乳白色の濁った入浴剤のせいもあってすぐに慣れてしまった。

「オマエ、意外と胸あったんだなー」

目を閉じたまま翔が呟く。

「意外とってなによ、意外とって!」

「いやぁー、ビックリ」

睨みつける私をよそに、翔は目を瞑ったまま笑っている。

「触っていい?」

驚く私の返事を待たず、白く濁ったお湯の中で、翔の手が胸に触れた。

大きな手の平で優しく撫でられる。

揉むのでもなく掴むのでもなく、それはすごく滑るような手付きで上から下へと動かされる。

心臓の鼓動がどんどん大きくなって、体が熱くなるのが自分でも分った。

ダメだ、このままじゃ……。

息が荒くなるのを押さえようと、きつく目を閉じて耐える。

それでもだんだんと体が仰け反り、ついに、息が漏れた…。
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