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気持ち
秋になった。
相変わらず、私たちは授業の合間をぬって海へ出掛けていた。
翔と私の関係も、体こそ重ねてはいるものの、これといった変化もなくただ漠然と時間だけが過ぎていく毎日だった。
「リョウ、私のタバコ取ってくれる?」
秋と言っても海辺は真冬のような寒さだった。
美里と俊、翔と私の4人は、湯たんぽ持参で今日も海へ来ている。
いつものように、一人寒さに耐えながら荷物番をする私の元へ、唇を紫色に変えた美里が海から上がってきて言った。
カタカタと震える美里に厚手のタオルをかけてやり、ビニール製の袋からメンソールのタバコを取り出して手渡す。
美里は「あ、ありがと」と呟き、体を縮めながら火をつけた。
波の音と、煙を吐き出す美里の息だけが私たちを覆う。
寒いねー、なんて笑いかけながらも、美里との間に流れる沈黙の空気に妙な居心地の悪さを感じていた。
「ねぇ……」
初めに沈黙を破ったのは、美里だった。
吸い終わったタバコを空き缶の中にねじ入れ、視線を私に向ける。
「翔と付き合ってんの?」
無表情のままの美里。
興味がある、というよりは確かめるような言い方だった。
「何で?」
「いや、前から二人でよく一緒にいるから。帰りも翔の家に寄ってるみたいだし」
ぶっきら棒な言い方に、私は「あぁ…ね」と曖昧に返し、手元のケースから自分のタバコを取り出して火をつける。
美里に「いる?」と差し出したら、いらない、と首を振るだけの返事が返ってきた。
潮風に吹き消される煙を見つめながら、独り言でも言うかのように私は口を開く。
「付き合ってないよ、たぶん」
「は?マジで言ってんの?」
「うん。だって――付き合おうとか言われてないし言ってないし」
「リョウはどう思ってんの?」
「ん?尊敬してるよ、大人だなーって」
「――翔は、何て?」
身を乗り出すようにして私を見つめる美里は、何故か私を攻めるような口調に変わっていた。