Thank you for...
翔は―――

何も言わない。

好きなのか、嫌いなのか。

私も聞かないし、翔も自分から言う事はなかった。

それでも、一緒にいれるだけで良かった。

学校で、海で、翔の部屋で。

私は他の女の子たちよりも“特別”なんだって思えたから。


「――別に何も言われてないよ」

軽く答えた私の言葉に、美里の目がみるみる大きくなる。

驚いてるというより怒ってる目だった。

「それでいいの?」

私の目を見つめ、強い口調で美里が叫ぶ。

別にいいよ、と微笑むと、美里は大袈裟に頭を振って「しっかりしなよ」と私の肩を強く掴んだ。

「ただの都合のいい女になっちゃうよ!それで泣くのはリョウなんだよ!」

始めてみる真剣な表情。

さっきまでの責めるような、怒ったような表情は消えうせ、私を心配するような顔をしている。


何で美里がムキになるの?

私がいいって言ってるのに、何でそんな顔するの?

私が泣かされるって?

何で?

今のままでも幸せだよ?


「――ちゃんと翔と話しなきゃダメよ」


不思議そうに見つめ返した私にそう呟き、美里は海へ戻って行った。

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