Thank you for...
しばらくの間、二人の間に沈黙が流れる。

チョコとコーヒーを交互に胃に流し込む私と、タバコの煙を吐き出す美里。

…そもそも、何で私ここに来たんだっけ?

あぁ、そうか。

美里に誘われたんだった。

「たまには遊びに来なよ」って。

別に断る理由もなかったし、なんとなくその場の雰囲気で来てしまった。

でも…この沈黙は何?


「ねぇ、何か話でもあったんじゃないの?」


沈黙に耐えかねて口を開いたのは私だった。

美里は「ん…」と顔を向け、そうだったわと微笑む。

何?

本当に話があったの?

翔のこと、好きだったのよ、とか?

少し遠慮がちに微笑んだ口元から出る言葉にジッと目を凝らした。


「翔と話してる?」

「え…?」

「何か…聞けた?」


もったいぶった言い方。

空になったカップと手の平で左右に転がしながら、美里は私から視線をはずさない。


「何?何か話したいならハッキリ言ってよ」

思わずイラついた口調になってしまう。

前から気になっていた。

いつも疑問口調な聞き方で。

本音を語らない私が言うのも変だけど、美里も本音が見えない聞き方をしていた。

責めるような視線を向けている私に、美里は「ゴメンゴメン」と笑いかけると、一つ息を吐いて話し出した。

それは「ハッキリ言って」と言った自分を呪いたくなるような話だなんて思いもしなかった。


「ちゃんと彼女と別れたのか心配してたのよ」


えっと…。

今、何て?

カノジョト ワカレタノカ?

え…?

誰が?

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