Thank you for...
思い出してみたら…見逃してた事は沢山あるかもしれない。

学校では、何度もなってたメールや電話の着信音。

二人でいるときは…一度もなった事がない。

海へ行くときも、砂が入るからと俊の車に置きっぱなしにしてた。

ポストも開けたことなかったっけ…。

日曜は会う事が多いのに、連休だと会えない日が多かったのも変だ。

もしかして…

携帯の電源、切ってた?

もしかして…

彼女が遊びに来てた?

もしかして――

考えたくない事ばかりが頭を駆け巡った。

不安で泣きそうになった。

そんな私を見て、本当に何も聞かされてなかったの?と美里が呟いた。



「でも、リョウが部屋にいて女の痕跡が見えないなら別れてると思うよ」

心配ないって。

そんな美里の言葉なんて慰めにも不安の解消にも何にもならなかった。

ただ、もしかして―と不安が駆け巡る。

「二股だったらよくないから、泣くのはリョウだから…はっきり確かめてもいいんじゃない?」

「…なんで私が泣くの?」

思わず口をついて出た台詞。

自分でも驚くほど低い声だった。

「…振り回されるのが目に見えてるから」

それに屈さず美里が答える。

私は、リョウよりも友達として長く翔を見てきてるから分る――と。
< 55 / 114 >

この作品をシェア

pagetop