Thank you for...
ドクンッ…。

再び心臓の音が早くなる。

これは…見てはいけないんじゃないかと心が警報を鳴らした。

それでも見ずにいられなかったのは、昼間の美里の言葉があったからだと思う。

『彼女と別れたの?』

心臓の鼓動は、俊や翔を心配していた時よりも早くリズムを刻んでいた。



9月5日

今日は、翔の好きなロールキャベツを作りました。

形が崩れないように持って行ったけど、大丈夫だった?

心を込めて作ったから、喜んでくれると嬉しいな。



9月6日

明日は予備校も休みだね。

久しぶりに二人で過ごせる事が嬉しいよ。

どこに行こうか?

まだ暑いから、気晴らしにドライブでもいいね。

早く明日にならないかな。



どう見ても、彼女が書いた日記だった。

並べられた文字から、翔に対する愛情が溢れでていた。

その溢れた気持ちは、ドロドロと私の心を責めるように流れ込んでくる。

心臓は破裂しそうなほど早いスピードで鼓動を続け、息苦しさを覚えた私は息を短く吐き出しながらもノートから目を離せずにいた。

早く…ノートを閉じなきゃ…

そう思えば思うほど体は硬くなり、目だけが文字を追ってしまう。

あまりの辛さに、ページを飛ばして開いた日付の日記。

私の心は、たぶん、この時壊れたんだと思う。

見なければ良かったと、後悔しても、時すでに…遅かった。
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