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それから私たちは、美里が買ったという新作のブランドバックの話やクリスマス限定の化粧品の話に花を咲かせた。

「リョウ、講義終わったら一緒に買い物行こうよ」

「いいよ。コート見たいし」

「どんなやつ?」

「ベージュのトレンチ。春まで着まわせそうなやつ」

「へー、いいじゃん。私も買おっかなぁ」

「この前、千鳥格子のコート買ったばかりじゃん」

「うーん、見たら欲しくなるかも」

「無駄遣いしすぎぃ。財布没収するよー」

美里のおかげで何とかうどんも喉を通りそうだ。

買い物に行ったら気晴らしになるかな。

たまにはカフェでケーキ食べるのもいいかな。

美里の手元でキラキラ光る携帯のデコレーションを見つめ自然と笑みがこぼれる。

それ、派手すぎない?

そう?2万もしたんだけど。

女同士の他愛もない会話。

「俺ぇ、クリスマスは財布が欲しい」

二人の座る席に、翔が無理矢理割り込んできた。

もう、痛いってば。

怒る美里。

笑顔の止まる私。

「リョウちゃーん、最近元気ないじゃーん?」

両手で頬杖をつきながら翔が私を覗き込む。

久々に会った。

連絡もしてなかったし。

心臓がドキドキ音をたてる。

動悸、というのだろうか。体に悪い拍動だった。

「海も来ないしさぁー、寂しいじゃんよ」

翔は口を尖らせながら、拗ねた表情を作る。

そんな翔を見つめながら、私は笑って「ごめんね」と答えた。

たぶん、そう答える以外に正解はなかっただろう。

あんたのせいだよ。

彼女いるんでしょ。

そんな事は、口が裂けても言えない。

言い訳しても、すぐバレるような気がしたからでもあった。
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