Thank you for...
「材料、これから買いに行くのかよ」

コタツの中で猫みたいに丸まった格好で翔が言う。

「うん。ちょっと行ってくるよ」

「外、暗いぞ?」

「大丈夫だって」

「…危ねーから付いてってやるよ」

「寒いよ?」

「…その代わり、マズかったら殺すからな」

何だかんだで最近優しい。

槍でも降りそうな位。

荒っぽい言葉だけど、ちゃんと優しさが伝わってくる。

翔は「ダァ!」と叫びながら気合を入れてコタツから飛び出した。

すごく寒がりの翔は、スウェットとセーターにダウンジャケット、足元は靴下2枚履きという若さの一欠けらもない格好で玄関へ向かった。

「お前はこれ被ってけ」

そう差し出されたのは、フリース地の筒状のもの。

何これ?

腹巻?

「バカか。ネックウォーマーだよ」

手渡されたそれを不思議そうな顔で見つめる私に、呆れた顔で翔が言う。

何、ネック…?

初めて聞いた単語に頭を捻っていると、翔がそれを奪い取って勢いよく私の頭にかぶせた。

「これは、マフラーの変わりなの。バイク乗るときとかスノボする時に便利なの」

溜め息交じりに説明する翔。

あぁ…そうなんだ。

だって、バイクも乗らないしスノボもしないから知らなかったんだもん。

ありがとう、そう言いながら私は唇を拗ねたように尖らせた。


ピン…ポーン


遠慮がちに響くチャイム。

玄関にいた私たちは、ハーイと声をそろえてドアを開ける。

開けた扉の向こうに立っていたのは運送屋の兄ちゃんだった。

「お届け物でーす」

誰から?

私たちは同時に差し出された細長いダンボールの伝票を覗き込んだ。

< 74 / 114 >

この作品をシェア

pagetop