Thank you for...
クリアケースに入ったオレンジ色の香水。

部屋の明かりを受けてキラキラと輝いている。

私は涙で歪んだ視界の中、それを握り締め、次の瞬間玄関へと走った。

勢いよく開けられたドア。

その先の手すりから、下の道路に向けて思いっきり…投げ捨てた。

パリッ。

冷たい空気の中、投げ捨てた勢いで手すりから身を乗り出すようにして止まった私の耳に、ガラスの割れる小さな音が届く。

割れちゃえばいい。

いらないものは、全部捨ててしまえばいい……。

「バカッ!!!」

後ろから翔が私を羽交い絞めにして部屋に引き戻す。

「人がいたら危ねーだろぉがよっ!!」

初めて聞いた翔の怒鳴り声。

でも、そんなもの私の耳には小鳥の泣く程度にしか届かない。

…何で私が怒られなきゃいけないの?

…悪いのは私なの?

…私の事…嫌いなの?

涙がとめどなく溢れ出て止まらない。

このまま、体中の水分が流れ出てしまうんじゃないか…。

そんな事を、朦朧とした頭で考えていた。

私の事…本当に好きなら…何でこんなに辛い思いをさせるの…?

「リョウ…しっかりしろ。大丈夫だから…」

力が抜けて座り込んだ私を、翔が抱きしめる。

ダイジョウブ…?

ナニガ…?

もう…嫌だ。
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