Thank you for...
次の日、私は友春に呼び出された。

新歓コンパの時に声をかけられた翔の予備校時代からの親友。

私は、待ち合わせた駅前のベンチに座り、友春が来るのを待っている。

駅前は昨日までのクリスマスムードから打って変わって、いつもの静けさを取り戻していた。

「リョウちゃん!」

声をかけられ顔を上げると、オシャレなジャケットにストライプのストールを巻いた友春が立っていた。

「あぁ…」

私は力なく笑う。

昨日の今日じゃ、笑う元気もそんなになかったから。

「昨日、ケンカしたんだって?」

隣の開いたスペースに座り、横の私を覗き込むようにして友春が言った。

…もう耳に入ってるんだ。

早いね。

心の中でコッソリ悪態を付く。

「アイツ、不器用だからさぁ…付き合いきれないって思うかもしんないけど仲良くしてやってよ」

右耳に刺したピアスを指先でいじりながら友春は言う。

4コも5コも上の人間が「仲良くしてやって」と私に頼んでいるのだ。

何か、滑稽だよね…。

私は頼まれるほど立派な人間じゃないよ…?

私は無言のまま、再び俯き足先を見つめる。

「嫌いになったの?」

心配そうな問いかけに、私は俯いたまま首を振った。

< 79 / 114 >

この作品をシェア

pagetop