Thank you for...
好きとか嫌いとか、そんな薄っぺらい事はどうでもいい。

私には翔が必要で、翔には私が必要なのか。

それが昨日から頭の中をすごいスピードでグルグルと終わりなく回っている。

なんで私はこんな苦しい思いまでして翔の傍にいるんだろう。

あまり考えると涙が出そうになるから、私は出来る限りの笑顔を作って顔を上げた。

「大丈夫だよ」

何が大丈夫なんだか。

自分で吐いた台詞に、心のなかで突っ込みをいれる。

そんな私の心なんて知らない友春は「良かったー」と安心しきった笑顔で息をついた。

「翔はさ、最初の頃からリョウちゃんの事気に掛けてて、いつも「心配だー」って言ってたの。俺から見ても何が心配なんだか分んなかったんだけど。だから、リョウちゃんが思ってるより、翔はちゃんと好きだよ。ちゃんと目はリョウちゃんの方を見てる。俺が保証するから」

友春は、そう言うと冷たい空に向かって大きく伸びをする。

その、天に向かって伸ばされた横顔を、私はボンヤリ眺めていた。

整った顔立ちで、友達思い。

どうして私は友春じゃなくて翔を好きになったんだろう。

友春を好きになってれば、こんな辛い思いはしなくても良かったのかな。

そんな馬鹿げた考えが心の中に飛び込んでくる。

でも、そんな思いは、ブラックホールみたいにぽっかり開いた心の穴に吸い込まれて消えていった。

「冬休み入ったら、一緒にいる時間増えるから。いっぱい甘えろよ」

顔を上げたまま、首だけを私の方に倒して友春が笑う。

「…そ、だね」

呟いた私の口から白い息が漏れる。

それは、吹き抜ける風にのって流され、消えていく。

なんだか、心のモヤが消え去るようで、見ていて気が楽になった。

溜め息は…幸せが逃げるんじゃない。

不幸せを逃がしてるんだ…。

そんな感傷に浸る自分が、妙に愛おしく感じていた。
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