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「翔の地元って、離れてるよね?会いに来てたとしてもリョウがいたわけだし…会うのは不可能なんじゃない?」

美里は心配そうに眉を下げて言う。

四六時中一緒にいないんだから、会う時間なんてどうにでもなるんじゃない?

私は短くなった煙草を灰皿に押し付けながら答える。

「いいの…?」

「ん?いいよ」

顔を上げると、真顔の美里と目が合った。

私はニッコリ笑顔を作ると「いいの」と自分へ念を押すようにもう一度言った。

「ケーキ、頼んじゃおっか」

すっかりテンションが下がってしまった空気を和ませようと、私はテーブルの上に置かれた小さな可愛らしいメニューを手に取る。

「ガトーショコラ…いや、ベリー畑のミルフィーユにしよう!」

「ベリー系って奥歯に詰まるからパスだなー」

せっかくの私の気分を美里は一言でへし折る。

そんな美里に膨れっ面で言葉を返した。

「いいもん、虫歯ないし」

「私はフルーツ達の演奏会にするー」

「なに、そのネーミング」

「…ベリー畑も相当ウケるじゃん」

私たちは互いに顔を見合わせて笑う。

もう、訳が分らなくなって二人ともお腹を抱えて大爆笑してしまった。

笑い涙でアイラインが滲んだと騒ぎながらも、運ばれてきたケーキはすごく美味しかった。

美里の言ったとおり、奥歯にブルーベリーやラズベリーの種がはさまってしまって気持ち悪かったけど、味はほんのり酸味があって2個目がいけそうな位サッパリした美味しさだった。

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