Thank you for...
『美里、見て!これ、カワイイ!!』

『これ、ティファニーの定番だよねー』

『うん。でも、新作がでても戻る所はコレ!って感じじゃない?』

『じゃぁ、買っちゃう?』

『そうだねぇー。バイトのお金が溜まったら買おうかなぁ』

『リョウは、指輪とか欲しくないの?』

『うーん。実験で試薬使うし、ずっとはめられないのは寂しいからいらないかな』

『ふぅん、そうなんだぁ』

春先のアクセサリー特集の記事を二人で眺めながら交わした会話。

雑誌を持ってきてたのは美里だったっけ。



「まさか…」

記憶の糸を手繰り寄せた私は、目を見開いて翔を見る。

「そ。アレは俺が美里に頼んで仕組んだ会話でしたぁ」

翔は、オーバーに手を横いっぱいに広げながらイタズラっ子の顔をで笑った。

「そんな回りくどい事しなくっても、聞いてくれたら良かったのに」

私は拗ねた表情で口を尖らせながら言った。

「それじゃ、サプライズになんないじゃんよ」

「…サプライズ?」

「そ。サプライズの方が貰うのもあげるのも楽しみが大きいじゃん?」

満足そうな翔の笑顔。

そんな素振り、今まで少しも見せなかったのに。

全然気が付かなかったよ…。

でも、やっぱり嬉しい。

「ありがと」

箱を握り締めながら、精一杯の笑顔を翔に向けた。
< 92 / 114 >

この作品をシェア

pagetop