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「翔には言って来た?」

「ん?」

私に急かされて着替えを始めた美里が、ジャケットに腕を通しながら言う。

「翔には宮崎行くよって言ったの?」

「言ったよー」

「付いて来たがらなかった?」

「ん?別に?何でぇ?」

リビングの大きなテーブルに頬杖を付いた姿勢で興味なさそうに答える。

それに対して、美里は振り向きながら「サーフィン、したいかと思って」と言う。

そして、「日南とか、波がいいって有名じゃない?」と首を傾げながら続けた。

「んー、何か両親が遊びに来るとか言ってたよ」

たぶん嘘だと思うけど。

最後の言葉を飲み込みながら目をそらす。

「なーんか、嘘っぱいわね」

美里の疑った声にドキっとして、視線を慌てて戻したけど「ま、情報はすぐ集まるでしょ」と意味深な台詞に流されてしまった。

「情報?」

「うん。リョウがいない間、翔が変な動きしたら私に連絡入る様に手配ずみ」

「何それ!!」

まるで翔に見張りをつけてるような言い方に、私は思わず声を荒げてしまう。

「だって、心配じゃない?」

「心配じゃない!!いいよ、見張りなんて!!」

そんな浮気調査してる妻と探偵じゃないんだから、そんな事は絶対にやめて欲しかった。

だって、自分がされても嫌じゃない?

「怒んないでってば。これは、私じゃなくて友春の提案よ?」

「…友春の?」

意外な名前に、私はキョトンと目を開く。

「リョウの誤解や心配の種を取って信用させる為もあるみたいよ」

そう言うと、美里はニッコリ笑って車のキーを手に取った。
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