笑顔の理由
「執汰待ってよ〜。」


「早くついてこーい。
俺はお腹が空いたから早く家に帰りたいんだけど。」

そんなこと言っても執汰は
亀のようなスピードで
自転車を押していた。



やっと追いついた。

高校の夏服は爽やかな執汰にぴったりだ。


「ねぇねぇ、夏休みに入ったら
執汰と一緒に話すことも少なくなるねぇ。」


「ん〜?そうか?
去年の夏休みとかも
俺の家でテレビ見てたりしてたじゃん。」


あ〜そうだった。

去年もその前の年も
執汰のお母さんと
お昼のドラマを見てたんだった。


「じゃあ今年もそうなるのかなあ。
楽しみだなあ〜。」


「じゃあ俺はその間に
山口家にお邪魔しよーっと。」


「ハルと遊んであげてね。
ハル、執汰のこと好きだから」


トイプードルのハルは執汰と
遊ぶのが好きらしく
執汰が家に来ると
執汰から離れようとしない。


執汰が急に立ち止まった。

「え…」


「どうしたの?」


そう言って執汰が見つめている所を見ると…


「久しぶり。
執汰くん、笑和ちゃん。」


「美月(みつき)…なんで?」


「美月ちゃん!!
帰ってきてたの?!」


私はそう言って美月ちゃんに抱き着いた。
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