幸せのロウソク
店と店の間の細い道の向こうに、一軒の店がある。

何故だか足が自然とそちらに向いた。

夕闇の中で浮かび上がるその店は、小物屋らしい。

扉を開くと、ベルの音が店内に響いた。

―いらっしゃいませ。ようこそ我が当店へご来店いただき、ありがとうございます―

店内には一人の若い青年が立っており、深々と頭を下げた。

少女は軽く頭を下げ、店内を回り始めた。

小さな小物が所せましと並んでいる。

アンティークものばかりだが、値段が貼られていないのが気になった。

ふと視線を反らすと、青年と目が合った。

青年は優しい微笑みを浮かべ、頭を下げる。

顔が赤くなるのに気付き、慌てて違う所を向いた時、ある物が目に映った。

可愛らしい色と形のロウソク逹。

―可愛いキャンドルでしょう?―

不意に声をかけられ、驚いて振り返ると、すぐ背後に青年が立っていた。

―当店の人気商品なんですよ。この『ハッピーキャンドル』―

―ハッハッピーキャンドル?―

―ええ。火を付けて、香りを身にまとうと幸せになれるんです―

そう言われ、思わず一つのキャンドルを手に取ってみた。

手の平サイズのキャンドルは、薄いピンク色で花の蕾の形。
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