愛唄
「い、いや、そういうわけじゃ――」
「心配しないでよ、イトコなんだから」
一瞬止まった翼は、まばたきを繰り返し――
「……イトコ?」
とても驚いていた。
「小学生の頃は、一緒に柚縷ちゃんと遊んでたんだけどね。事故の後は会いに来てなかったらしいから、連れて来ちゃった」
「そっか……あ、あがって。おばさん今は買い物行ってていないけど」
そう言って翼は中へ通してくれた。
後ろから付いて来る優奈があたしの手を握って来て少し驚いたけど、優しく握り返した。
その手は少し震えている。
「大丈夫だよ。大丈夫、優奈」
不安な顔をしている。
柚縷ちゃんの部屋の前に着いた。
今優奈は、去年久しぶりにこの部屋の前にきた時のあたしと同じ気持ちなのかもしれない。