愛唄


「いらっしゃい、優奈、花垣さん、その彼氏さん。入って」


そう言って、初めて泰斗くんの家に足を踏み入れた。


翼はずっとあたしの手を握っていた。

だからあたしは、握り返していた。


リビングに案内されて、4人で座った。


「今日は俺以外誰もいないから、安心して話せるよ、花垣さん」


優奈はただの知り合いだと思ってるだろう。

でも泰斗くんは気付いてる。

翼も、准と関わってるってことだけは……。


「とりあえず自己紹介から。俺は東城泰斗。優奈の彼氏」

「俺は新津翼。よろしく」


にっこり笑った翼は、怖い笑みじゃなかった。


……でも、あたしの好きだった人って聞いたら、どうなるだろう……。
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