願った日々
「さっきのあの子は、いったい誰かしら?
お礼もしっかりしたいのに。」

先ほどのお母さんは洸のことを探していた。

「あれ、お母さん、何しているの?」人ごみの中から
15、16ぐらいの女の子が出てきた。

その娘は薄く茶色い巻き髪だった。

「あら、姫(ひめ)、買い物はおわったの?」

この女の子は後の話で登場する春野姫(はるのひめ)だ。

「うん、一通りね。で、何かあったの?」

「あのね、さっき僕の風船が木に引っかかっちゃって、
泣いていたの。そしたらね、優しいお兄ちゃんが
僕の風船を取ってくれたの。」

女の子の質問に男の子が答えた。

「へぇ~、良い人だね。で、その人がどうしたの?」

「それが、御礼をする前にどこかにいっちゃって・・・あら?」

男の子たちのお母さんは何かを見つけた。

「これ、さっきの子の落し物じゃない。」

・・・この話は作者のいいようにすすめられている。

「えーと、あらやだ、姫と同じ高校の子じゃない。」

「えっ、うそ。」女の子は驚いたようだ。

「え~と、1年A組天地洸(あまちこう)くんか。この生徒手帳
去年のだから明日から2年生か・・・あら、姫あなたと同じ
クラスだったのね。よかった。」

「えっ・・・」姫はそれを聞いて驚いた。

洸と姫は同じクラスだった。

「じゃあ、姫明日彼にこれ、返しておいてね。あと
お礼も言っておくのよ。」

「なんであたしが・・・」反発の中に照れがある。

「なんでって、あなた彼と同じクラスじゃない。わかった?
きちんとお礼を言っておくのよ。」

母親の頼みに姫はしぶしぶうなずいた。

姫は洸のことが好きだった。

しかし、なかなか話し掛けることが出来ずにいた。
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