世界で一番嫌いな君へ
Act.1
「つぐみ?」
「へっ」
「あ、また先輩の事見てたんでしょ」
気が付かない間に背後に居た友人に驚き、情けない声を上げると、
彼女は意地悪に口角を上げて窓の外に視線を巡らせた。
私は恥ずかしくなって、手遅れだと言うのに意味も無く教室の中を歩き回る。
その間に光ちゃんは、常盤先輩を見つけてしまったようだ。
「おー、今日もいい男だね」
結局、消しきれずに残った黒板の隅の文字も、落書きだらけのクラスメイトの机も、
光ちゃんの一言ですべてが遠い記憶のようにぼやけてしまう。
目に焼きついた色んな表情が次々と頭に浮かんでは消えて、まるで花火みたいに。
先輩は今どんな顔をしているんだろう、私の知らない顔だったりして。
そわそわし出した私に気が付いて、光ちゃんがまた意地悪く笑う。
「見ないの?」