End of the transmigration of souls■Chapter1■
死んだ人がそばにいるのは物凄く辛かった。それなのに、転生してしまえばそれも物凄く辛かった。あたしはなんてわがままなんだろう?


頭の中でたくさんの記憶が流れた。 瞳からはたくさんの涙が流れた。どうかこの記憶をこのまま涙と一緒に流して下さい。記憶の中の人はもうここには居ないんです。だから記憶があるのが辛いんです。……最期の最期まで 決して笑顔を忘れない人でした。大好きだった人でした。大好きな大好きな人でした。この時、やっと彼の死を確信した。









「帰ります」
「……何バカな事を言っている?」
「帰りますのどこがバカなんですか?」
「お前はまだ………」
「自分の家に帰るのがそんなに悪いですか!?……師匠も自分のあるべき場所へ還っていきました。あたしの仕事は終わりました。だから帰ります」
「ライアットが還った?」
「はい。転生しました」
「何をバカな事を……」
「ブレダ殿……さっきからバカバカって……」
「ブレダ!」
「団長!」
「まぁ……一度帰還させてやれ」
「しかし……ッッ!」
「たまにはいいだろう。なぁイセルナ?」
「団長ッッ!」
「団長……。いいんですか?」
「ただ、気が向いたらいつでもここへ来るがいい。ここはお前の中に居るアンザックの家でもある。たまには連れて来てやれ」
「………はい」


父とはこういうものなのか。兄とはこういうものなのか。これが家族というものなのか。あたしには家族は居ない。あたしは人間でもない。でも、こうして自分を思ってくれる人が居る。それがたとえあたしの中にこの人達の家族が 居るからだとしても、それでもかまわない。ここで過ごした2年間、あたしはまた少し人間になれた気がした。



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