End of the transmigration of souls■Chapter1■
強く………。
強く………。
もっときつく……。
いっそこのまま壊れてしまっても構わない。消えてしまっても構わない。だから今夜は……




「なんでそんな悲しい顔するの……?」
「…………傷痕が……」
「……あ……」


右肩の傷。
右横腹の傷。
背中から鳩尾に貫通する傷。
そして、移植手術の時の左胸の傷。
あの日の傷痕が今も消えずに烙印の如く
刻まれている。もう決して消える事のないあたしが死んだ証。あなたの知らない
あたしの姿。あんなに大事にしてくれてたのにこんなに傷付けてしまった……。


「………こんだけやられれば……………んッッ!」

ゼファはきっとこの話を聞きたくないんだろう。あたしが話してしまう前に唇を塞いだ。何度も何度も言葉では伝えきれない何かをぶつける様に。まるで傷痕を消してい様に舌が這っていく……。彼の想いが痛いほど自分の心に伝わってしまうのが恐かった。ゼファの気持ちが叫んでる……。きっと泣いている……。きっとあたし以上に痛みを抱えてるかもしれない。


初めて見るゼファだった。ごめんね………。 あたしのせいだね。でも、もう大丈夫。あたしは今度こそいなくなったりしないから………。


もうあたしは軍人にも騎士にもならない。ただの女になろう……。いや。人間になろう。それが一番幸せ。そう思うから。


こうして体を重ねるのは初めてじゃないのに、こんなにも近くに感じて、こんなにも自然と涙が溢れるのは初めてだった。あたし………生まれてきてよかった。初めてそう思えたよ………。



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