先輩が死ぬ時
先輩は目を真ん丸とさせた。

そして残念そうに呟く。
「ああ、制服が無駄になっちゃった」

僕等は走って逃げた。

翌日の学校は休校になった。謎の放火魔として話題になったが小規模な火災に悪戯と判断されたのか、すぐに収束を迎えた。

内心ドキドキの僕を先輩は、いつもの如くニヤニヤと見てくる。

そして口を尖んがらせながら言う。

「あーあ、何で消えたんだろう?」
「多分上手く撒かれてなかったんですよ」
「気をつけたのにな」

残念そうな先輩は部室の机を蹴った。

机の角に小指がぶつかったのか痛がっている。

あの晩、炎が上手く描けなかったのは僕のせいだ。
ガソリンを捲く時、間を開けただけだ。
僕は毎回そういうことをやっている。

それを先輩は知っている。
知っていて僕を誘う。

理由は、わからない。
死にたくないのかも知れない。先輩の性格上、僕の姿を見て楽しんでいるのかも知れない。

僕等のこの関係は、先輩がいなくなるまで続いた。

まだ痛がっている先輩に僕は言った。

「そのまま死ぬかも知れませんね」

そういうと先輩が答えた。

「それは美しくない」
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