They are going out
 「これでホントに高校三年生かしら?」

 ちょうど隣りに座っていたあたしに美紀が言う。

 「みんながきちんと須山さんみたいに、高校生らしい態度で話し合ってくれればいいんだけどね」

 そう言いながら、既に彼女の眉間には皺がよっている。そう、シワ。

 「……。」

 美紀に返す言葉も見つからず、あたしは身動きの取れない小動物のような、困惑気味の笑顔で対応していた。

 だって、この仏頂面で話し掛けられたら困るって。マジで。

 しばらく美紀は、口を尖がらせて黒板のほうを見つめていた。

 そしてついに、立ち上がって言ってしまった。

 「いい?騒ぐのはかまわないんだけどさ、みんなの文化祭なんだからね、みんなで決めてよ。わたしの文化祭じゃないんだからね、あなたたちの文化祭なんだからね」

 …そりゃそうなんだけどさ。

 あんたも意見出してくれればいいじゃんよ。

 三島のクラス(3i)なんか、先生自身も案を出して、実に和やかなロングだって言うじゃないか(しかも三島自身が張り切って参加のお化け屋敷・笑)。

 ――と、あたしは美紀の隣りで思っていた。思っただけだ。

 口は災いの元だというから、とてもとても本人を目の前にしてこんなことは言えない。

 更に美紀は繰り返した。

 「わたしは皆さんがどうでもいいんだったら文句なんて言いませんよ。わたしの文化祭じゃないんだもん。あなたたちの文化祭なんだから」

 この美紀の言葉を聞いて、クラスのほとんどが表情を変えた。

 彼女に対してムカツクと同時に、次のシーンが目に見えてくる。

 たいていこんな時には、彼女は――


 消える。
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