They are going out
 「わたしがいなくても話し合い出来るわね、

 で き る わ よ ね。」

 捨て台詞なのかは知らないが、美紀はこんな言葉を吐き捨てて教室を出ていった。

 いつものことだけど。

 毎度のことながら美紀は、月曜六限のロングの時間に、教室を抜け出してヒールの足音を廊下に響かせる。

 そしてその足音は、3Gの隣りの生徒相談室へと消えていくのだ。

 そこにいるのは、進藤先生…だけのはず。

 そういえば、あれは去年の校内マラソン大会の時だった。

 うちの高校から遠く離れた(遠く、じゃないな。ま、そういうニュアンスで)隣の市のでっかい国定公園が大会会場で、本来ならば駐車場なのだと思われる場所に陣取って、生徒は準備体操をするのだ。

 で、その前方にいる教員連中。いえ、先生方のほうに目を向けると…。

 「ねぇ、美紀と進藤っておそろじゃない?」

 二人とも、別に流行ってるわけでもないのに白ジャージ。

 まるでペアルックを疑われそうなお揃いのジャージを着ていたのだ。

 実は美紀にフラれた藤谷も白ジャージだったのだけど。

 そして、よく生徒相談室にも消えていく。

 思い返してみればその去年っていうのは、美紀のクラスと進藤のクラスが更衣室ひとつ挟んでお隣り合わせだった時で。

 廊下で仲良さげに立ち話をしているのはしょっちゅう見ていたので、あの二人って…なんて考えていたけど。

 あれ?

 でも、今って美紀とくっついてるのは徹でしょ?

 どっちにしたって不倫(=男女が、越えてはならない一線を越えて関係を持つこと)だよな。

 あぁイヤラシイ!(再度興奮)

 そんな考えに耽っていると、いつのまにかあたしは居眠りに突入し、その重いまぶたを何とか持ち上げた時…美紀はまだいなかった。

 あの人、何やってんだ?
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