They are going out
   *
 「いっつも思うんだけどさぁ」

 あたしの後ろに座っている奈緒ちゃんが、突然話しかけてきた。

 「美紀って、ロングの時こうやってどっか行っちゃうじゃん」

 その言葉で、半径二メートル以内の女子が奈緒ちゃんを取り囲む。

 そして奈緒ちゃんは続ける。

 「あれってやっぱ、まずいことでもしてるわけ?」

 吹き出す集団。

 テンションはかなり揚がっている。

 「例えば何よ」

 絵里子さんが聞く。

 「だーからー、進藤とデキてるとかじゃないの?」

 再び吹き出す集団。女子のほぼ全員がいつのまにか大興奮。

 「でもあたし、最近徹サンともデキてるとか聞いたんだけど」

 爆笑しながらカオリンが言うと、

 「マージでー!」

 予想通りの大爆笑の渦にクラスは陥った。

 なんだ、結構知ってる人いるんじゃん。

 と、あたしは何故だかホッとした。

 …でその時。

 ロング終了のチャイムが鳴り、勢い良くヒールの音を鳴らして、美紀が駆け込んでくる。

 「はーい号令ー。挨拶はきちんとしましょうね。ほらお掃除。早く掃除場所に行きましょう。ほら、は・や・く!」

 教室中の酸素を使ってしまいそうなマシンガン並の口調で、今日も彼女は3Gをまとめている。

 その後ろにはいろんな人がいることを、あたしたちはどれだけ知っているのだろう。

 教室に戻ってきた時の美紀は、気のせいか、少し髪が乱れていた。

 もちろんあたしがそんな美紀を見て、厭らしい想像をしていたことは、言うまでもないことであった……。

 「あ、須山さんチリトリ持ってきて☆」

 「はーい」

 美紀にチリトリを渡しながら、あたしは思った。

 美紀に徹と進藤ねぇ…。愛のトライアングル。

 うーん、微妙(笑)。
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