They are going out
   *

 某生活雑誌『オレン○ページ』が大好きな家庭科教師・市原美紀が担任の我がクラス3Gは、彼女がその誌面から取り上げてきた『わたあめ作り』と『和紙作り』をすることにした。

 和紙は古い漫画雑誌などから作るもので、アイロン仕上げ。

 わたあめは機械を使わずに火だけでできる素晴らしいもの。

 まさにアイデア賞ものである。

 その説明書きを読んでいた加奈ちゃんが、突然大声を出した。

 「あ。」

 「どーしたの?」

 聞き返したカオリンに、加奈ちゃんは言う。

 「ねぇ、今更なんだけど文化祭ってさぁ…火って使っちゃいけないんじゃなかったっけー?」


 「うぞっ!」


 「うぞっ!」はカオリンの声ではない。

 教室の後ろのドアから、たまたま顔を出してきた美紀だった。

 「それって…文実(文化祭実行委員会)から言われてたっけ?」

 美紀はあわてた様子でその場にいる生徒に尋ねる。

 「いえ、何も指摘されてないですけど」

 生徒会本部で文実執行部の絵里子さんは言った。

 「言われてなきゃやっちゃうか…でもヤバいよねぇ…」

 美紀は考え込む。よほどわたあめ作りに執念を持っている事がうかがえる。

 何でだ?

 ま、ここではそんなこと、どうでもいいんだけど。

 今更わたあめ作りができなくなるのは、出し物としても痛いし、自分たち自身にしても辛い。

 なんてったってやりきれない気持ちになるだろう。

 しかしながら火気の使用が認められている教室はもう振り分け終了、入る余地は無い。

 けれども、文化祭実施要綱の実施方針⑪取り決め・注意事項①準備段階1「普通教室での火気の使用は禁止」という全校のお約束を破ってしまった場合は、非常に厳しい処分をクラス全体が受けなければならなくなる。

 それが意味するのはつまり、「文化祭への参加禁止」……。

 高校生活最後の最後でそれは痛すぎる。

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