They are going out
   *
 「ダメです。」

 もちろんこれは藤谷の言葉である。

 この言葉一つで、女の集団の目つきが変わる。

 空気も冷たくなる。

 ちょっと察したらしく、藤谷は震えた。(いや、クーラーのせいかな。)

 あたしたちは、生徒会室から藤谷を探してコンピューター室にやって来ていた。

 「どうしてですかぁ?」

 美紀は一応ぶりっ子気味に言った。

 長い長い、下手に下手に出た説明とお願いの後に、これである。

 だからお前、嫌われるんだよ(特に女に)。

 「要綱に書いてあるでしょう、普通教室での火の使用は禁止って」

 藤谷のあの顔。

 スケベったらしい上に、陰険そうで、そのくせいつも笑っている。

 マジきもい(気持ち悪い)。

 「だからダメです」

 嫌な顔。

 あぁぁ…。もうこの顔見てられない。

 「先生別にいいじゃん」

 本部の絵里子さん。彼女の魅力でなんとか、と思ったがこれも

 「ダメです」

 で片付けられた。

 誰か何か言えよ、とばかりに奈緒ちゃんがそこら中の肘を突っつく。

 しょうがない、奈緒ちゃんが藤谷を怒らせるよりマシか。

 「でも、企画書提出した時点でOKもらってますし、実行委員からもダメ出し無かったんですよね」

 あたしは言った。

 後を追う様に、文実の会計部(顧問は美紀)の葵ちゃんが言う。

 「OK出したのはこっちの責任なんですし、今更やめさせるのはかわいそうですよ」

 葵ちゃんナイスフォロー。

 今度は何を言われるだろう。

 「それは…OK出しちゃったのは、こちらのミスでしたけど」

 おっ、藤谷がちょっと引いた。

 美紀がちょっとほくそ笑む。

 この調子この調子、とあたしたちのテンションが上がる。

 さぁ、美紀の攻撃だ。

< 30 / 45 >

この作品をシェア

pagetop