They are going out
 「じゃ、教室がダメなら、どこならやっていいんですかぁ?」

 この美紀の突っ込み。やっちゃえやっちゃえ、とばかりにあたしたちも騒ぐ。

 「……中庭とか……」

 藤谷がつぶやいた。

 よっしゃ!…と思ったのもつかの間、余計な一言がえみちぃの口から発されてしまう。

 「外って衛生上良くないから、食品販売禁止じゃなかったっけ」

 えみちぃ言うな! と言う前に言ってしまったからもう遅い。

 「あ、外もダメですね。調理室も工事中で使えないし。じゃあやっぱり、3Gはわたあめ取り止めで、和紙のみってことで」

 藤谷の顔が更に不細工に見えた。

 やだー。

 ゲームオーバーか?

 しかし、ここで美紀が食い下がらないわけがない。

 生徒に向かってにっこり笑うと仕返し開始。藤谷の揚げ足を取り始めた。

 「でも今、藤谷先生おっしゃったわよね。中庭ならやっていいって。みんな聞いたわよね」

 うんうん、とあたしたちもにこやかに頷く。

 美紀は続けた。

 「じゃ、わたしたちはそれで話が済んだということで退室いたしましょう。はい、失礼しましたぁ」

 見事な結末。

 あたしたちは美紀に続いて「失礼しましたぁ」と生徒会室を出る。

 その時だった。

 いいんですか?と藤谷がつぶやいたのが微かに聞こえ、次に奴は大声で怒鳴った。

 「そんなこと言ってるあなたも、生徒会の顧問なんですよ!」

 あの不気味な笑顔を崩すことなく、藤谷は美紀の後ろ姿に向かってそう吐き捨てたのだ。

 あんだって?とばかりに女たちは一斉に振り返る。

 そしてその瞬間、奴は思わず息を呑んだ。

 振り返りざまに美紀が見せた、凄まじい形相に……。

 バンっと殴りつけるように閉められたドアが、美紀の心情を何よりもよく語っていた。
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