They are going out
   *

 オープニング終了後。

 あたしとミーちゃんはそれぞれのクラスの当番を抜けて、ほかのクラスの出し物を見に行っていた。

 途中、ポラロイドカメラを持って走っている柏尾を見かけて声をかけたけど、柏尾のほうは気付いていなかった。

 3Bの前まで来ると、『依頼写真やってます』の看板が見えた。

 そうか、柏尾は3Bだった。あいつは依頼写真の撮影に行ったのだ。

 ここで『依頼写真』の基本的な説明をしよう。

 依頼者は受付で記入用紙をもらう。

 受付には全校生徒の名簿が置いてあるので、写真に写してきてほしい人のクラス、名前、番号(番号はなくてもいい)を用紙に記入し、希望の質問を書き加えて受付係に渡す。

 すると番号札がもらえるから代金と引き換える。

 このとき受付係と依頼者はお互いに顔が見えることはないようになっているから、恥ずかしくても大丈夫だ。

 写真が出来たら番号を掲示するから、受付で番号札と引き換える。

 写真に写してきてほしいのが教員の場合は、教科と名前を記入すればいい。

 もしも写真が取れなかった場合は、代金は返却される。

 この『依頼写真』、毎年かなりの人気でやりたがるクラスが多く、上級生を優先して取り合っている。

 最近はどのクラスもバリエーションを増やしていて、『あなたのカメラにあの人の姿を収めます』とかいうサービスも見るようになった。

 3Bは写真の展示も行っているようだ。

 「真綾、のぞいてみようよ」

 ミーちゃんの誘いに乗って、あたしも3Bの展示スペースへと入った。

 そして、人の固まりを見た。

 固まり…っていうか人垣。

 「あれ、真綾じゃん。実乃里ちゃんも。ね、こっちきてみなよ」

 「あ、カオリン」

 タイミングよく居合わせたカオリンの手招きで、あたしとミーちゃんはその人垣の中へと入っていった。

 いったい何がこんなに多くの人を寄せ集めているんだ?

 「ほら、すごくない?」

 カオリンが指差した先には、大人の男女のキスシーンがでっかく写しだされていた。

 どうやらみんなの目的の写真はこれらしい。

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