They are going out
   *

 「…須山、よく喋るな」

 あたしの長い長い話を聞き終わった三島先生の第一声が、この一言。

 どこで息してるんだ?とでも聞いてくれそうな顔で、あたしを見ている。

 先ほどのたいそうな出来事を目にしたあたしは、たまたま目の前に現れた卓球部の女性顧問(そういえば国語)の三島祥子先生(34)をつかまえ、事のすべてをご報告したのである。

 「で、先生どう思います?」

 ちなみにここは、生徒よりは教員のほうが使用頻度の高いトイレ。

 けどさっき、でっかく赤で書いた『使用禁止』の張り紙をしてきたので、人の出入りは心配しなくて大丈夫だと思われる。…多分。

 「てゆーか、誰だったのよ。その二人」

 わかってるんだか、わかってないんだか、三島先生は問う。

 「ここまできたら察してくださいよ。新しいクラス編成、3Gですよ?…担任と、…副担任」

 「えっ…」

 そこであの三島先生が珍しく止まった。

 いつもべらんめぇ口調で、ある意味男よりも強そうな三島先生が、だ。

 まぁね、誰でも止まると思うけど。

 あたしが見た、その教室の中の二人ってのが、新しくあたしの担任となった市原美紀先生(家庭科)と、同じく副担任の新垣徹先生(体育)。

 二人とも確実に、既婚者、である。

 ゆえにそれは ――不倫。

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