They are going out
 『第1位は、獲得ポイント数二百三十八、『大人のキスシーン』撮影協力・進藤先生・市原先生でした。ちなみに、先生方にはカップルの真似をしてもらい、キスシーンもお互い二センチ以上隙間を開けてもらいました。ご協力してくださった先生方、本当に有難うございました』

 ――もう笑うしかなかった。

 あたしもミーちゃんもカオリンも、笑いながら遠い目をしていた。

 藤谷と徹はまたもや叫んでいる。

 あいつらはどちらにしても叫ぶのか。

 それにしても、とんでもない企画だった。

 カオリンはなぜか「ちくしょう」とか言ってるし、柏尾は実にすっきりした顔で帰ってきた。

 写真に写った例の二人、本当のところはいったいどんな関係なのだろう?

   *
 「先生方、有難うございました」

 柏尾は再度美紀と進藤に礼を言った。

 「ううん、ちょっと恥ずかしかったけど、楽しかったよ」

 美紀はそう言うと猫なで声を出して、

 「ねぇ柏尾くん。…あの写真、記念にもらっていいかな」

と訊いた。

 「え、明日も展示したらヤバいっすかね」

 柏尾はもったいなさそうな顔で言う。

 美紀は言った。

 「うーん…明日は他校の人も来るし、恥ずかしいからできれば…」

 「わかりました。じゃあこれ、先生に差し上げます」

 柏尾はそう言うと、素直に写真を渡した。

 「それじゃ、失礼します」

 走って帰る柏尾を見送りながら、美紀は進藤に言った。

 「ね、うまくいったでしょ」

 進藤も言い返す。

 「ああ。これで変な風には疑われないかもな」

 美紀の考えはうまくいった。

 匿名なら美紀と進藤のキスシーンが見たいと言う生徒なら、いてもおかしくないかもしれない。

 ここで堂々としていれば、他の教員にも感付かれないですむのでは、と。

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