They are going out
 あたしの肩に背後から誰かの腕が回り込み、ぎゅっとなって、背中があったかくなって――

 「こーんなことしてるとこ、見ちゃったとか?」

 何かと思えば、紗有の変態プレイ(笑)だった。

 「何するんじゃぁっ!」

 すかさず紗有にくらわそうとした必殺アッパーは、それをかわした紗有の体をすり抜け、あっという間に部屋備え付けのロッカーへ…。

 「……」

 無言で何かを訴えるあたし。

 「……」

 無言で勝利の笑みを浮かべる紗有。

 「ねぇ、話ずれてない?」

 読者のために働きかけるミーちゃん。

 「……」

 無言、ちゅーか居眠りし始める柏尾。

 四人のテンポは確実にずれている。

 こうしていると、昔を思い出してしまう。

 そう、紗有の支配下で泣かされていた、あの苦い思い出を…。

 そんな回想に耽っていると、紗有はもう一度あたしの肩に手をまわし、こう言った。

 「あんたの隠してること、ぜーんぶ話してみなさい?」

 「……はい。」
 
 そうしてあたしは、さっき三島に話した一切を、紗有の愛車チェリーピンクパールメタリック・ホワイト2トーンルーフ(長い)のラパンの中でもう一度語る羽目になるのであった。

 横を通り過ぎていくのは、三島が運転するシルバーのセリカだ。

 嗚呼、いったいこれから、どんな日常が待っているのだろう――。
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